スパイス記念日33[神田]神田まつや【神田カレー街の100皿: 32皿目】
スパイス記念日32[神田]神田まつや【神田カレー街の100皿: 32皿目】
訪店2021.7.3
■カレー南蛮そば ¥1,210
▷そば湯
神田でおいしいカレー南蛮、カレーそばが食べたいと思ったら、やっぱり神田まつやに足を運びます。超有名な老舗代表の一角にある店なのに、庶民的で敷居が低く、お値段も懐に優しいと来ています。出汁がよければ、カレー南蛮は確実においしいことを見事に表現してくれる一杯なのです。
江戸の蕎麦の味を現代に引き継ぐ 神田まつや
創業は明治18年(1885年)。頑なに伝統の江戸の味を継承してきたその老舗蕎麦なのですが、私みたいな一般庶民にも親しみやすい敷居の低さが愛される所以でもあります。遠方からも多くの蕎麦ファンが毎日行列する超人気店です。
(歴史)
明治17年の関東大震災後、小高家の初代政吉が明治18年に家業を継承して神田まつやの原型を興しています。その2代目賢次郎は蕎麦の製造技術を「魚藍坂の藪そば」の出身でのちの大森梅屋敷藪そばの創業者関谷作太郎に学びました。小高家3代目の登志は「蕎風会」にて「神田藪そば」の先代、「上野蓮玉庵」の先代、「神田錦町更科」の先代等々老舗の錚々たる方々にそば打ちの技法並びに営業のノウハウを学び、その集大成が現在の「神田まつやの姿」だとされています。
つけ汁は下町の名残ともいえる少し濃いめ。時に機械製麵を行っていた時代もあったのですが、昭和38年に全面的に手打ちに切り替えて、現在も伝統の蕎麦を守っていらっしゃるということなのです。
(小説家 池波正太郎も愛した神田まつや)
小説家 池波正太郎の誰もが知る名作といえば鬼平犯科帳でしょうか。その他数多くの名作がありますが、神田須田町のかつての連雀町周辺の老舗をこよなく愛していくつもの名店を作品に登場させています。神田藪そばや、甘味処の竹むらなどの記述などが有名ですが、神田まつやも池波正太郎がこよなく愛した名店のひとつで、下駄ばきで気楽に通ってきたといいます。
神田まつやの場所 Googleマップ
神田まつや(本店)は、神田須田町、御茶ノ水駅-秋葉原駅-神田駅に囲まれる真ん中辺あたりの場所に位置します。地下鉄で言ったら、東京メトロ丸の内線淡路町駅が近いですね。Googleマップを参考にしてください。
出汁のおいしい蕎麦はカレー南蛮もおいしい
さて、それでここに来たら、小生はもちろんカレー南蛮をいただきます。カレー南蛮、カレー蕎麦について、いろんなことを記述される方が大勢いるのは当然で、それぞれの感想も解釈もあると思うのですが、小生に関して言わせて頂けば、「出汁のおいしい蕎麦はカレー南蛮もおいしい」のです。そもそも、カレー自体が何を食べている料理なのか、何を楽しんでいる料理なのかという摩訶不思議なブラックボックスの正体を探求するうちにカレーを3000食以上も食べて記録した私なのですが、「おいしいの正体」はスパイスの香りでも刺激でもなくて、つまるところは「旨み」と「塩加減」そして「食感」であったというのが小生の基本的な持論です。もちろん例外はありますが、これは原則として語れるだけの共通項であると断言できます。そこに、スパイスの香りや刺激、さまざまな調理法によるその各種の味と香りと刺激のバランスが異なることによって、それぞれの個性が構成されてきています。料理人たち、特に出汁の旨みに敏感な日本人であれば、おそらく殆どの人がこの答えに至っているのではないかと勝手に想像しています。
カレー南蛮(そば、うどん)を50店舗以上食べ比べた結論は「カレー蕎麦は、カレーうどんよりもハズレがない」
(カレー蕎麦は邪道?蕎麦の味がカレーに負ける?)
少し脱線します。かつて私は同僚から「カレーうどんはいいけど、カレー蕎麦は邪道」と言われたことがあります。それはなぜかとその人に尋ねると「蕎麦の味がカレーに負けるから」と答えたのです。この時点で何か矛盾に気がつきませんか。その理由が本当であれば、蕎麦よりも香り風味の弱いうどんであれば、なおさらカレーに負けてしまうのです。明らかな詭弁だと思っていたのですが、その後何度も全く同じことを語る人に出会ったので、どこかで出まかせを言った有名人の受け売りをしているのだと分かったのです。ですから、その後はこの論を語る人たちは、他人の意見でマウントを取るタイプだと分かったので距離を置くようにしています。
(悔しいからカレー蕎麦・カレーうどん32店舗+数十軒を食べ比べた)
さて、しかし上記の批判をそのままにしておくのはかなり悔しいので、私は、神田カレー街あたりのグルメを称する皆さんから、おいしいカレーそば・カレーうどんを各16店舗ずつ紹介して頂きました。その中の3分の1くらいは、同一店舗でそばとうどんを食べ比べました。さらに数十店舗行って、合計50店舗以上のカレーうどん・かれーそばを体験しました。その結果、分かったことは「カレー蕎麦は殆どどの店で食べてもおいしいけれども、カレーうどんは中にはハズレがある」ということでした。この理由は明確です。蕎麦の味はカレーには負けません。それは体験すればわかります。なぜならカレー南蛮・カレー蕎麦の出汁は、そもそも蕎麦に合う出汁をカレー風味にしたり、カレールーを足したりしているので、その旨み風味は確実に蕎麦に合うのです。蕎麦は独特の風味がある分だけ、お蕎麦屋さんはカレー蕎麦にするときも、こと出汁に関しては店の味を守るのでハズレがないのです。ある意味、一定の範囲の味に収まっていて大冒険したメニューは滅多にありません。一方で、カレーうどんですが、うどんは逆に蕎麦よりも何にでも馴染むクセのないことが魅力です。よく言えば自由度が高いのです。ですから、カレーうどんの出汁については、けっこう大きな冒険をする店が軒を並べているのです。中にはタイ料理のグリーンカレー味であったり、生クリームを使用するクリーミーなものなど、カレーうどんは実に多彩で振れ幅が大きいのです。その結果、冒険しすぎたハズレ、冒険の方向性を誤ったハズレもけっこう体験しました。つまり、カレー蕎麦、カレー南蛮蕎麦って、案外どこで食べてもおいしいし、カレーうどんももちろんおいしいのですが、案外カレーうどんの方がハズレに巡り合う確率があるのです。
とはいえ、神田まつやは別格ですよ。
さて、御託を並べているよりも蕎麦を頂きましょう。
神田まつやのカレー南蛮
これが、神田まつやのカレー南蛮です。
決して、とろみの強くないシャバシャバの出汁なのですが、見た目には片栗粉のとろみ感を感じます。でも、実際ほぼサラサラの流動性がある出汁です。圧倒的に出汁の風味を大事にした味わいなので、カレーは風味がするという範囲にとどまり、強い刺激もなければカレーにどっぷりつかった味わいでもありません。ただ、おいしい伝統の蕎麦の出汁に、ほどよくカレーの風味が添えてあるという表現が合うのでしょうか。そんなカレー南蛮です。南蛮とはネギのことを言いますが、むしろネギへのこだわりが伝わるような気がします。このカレー南蛮表面のワンカットの写真に隈なくネギが見て取れる当たり、しっかり南蛮を味わってほしいという思いが伝わってくるようです。
弾力のあるかしわと、蕎麦の麺。伝統の老舗名店の蕎麦がカレーに負けるだなんて失礼千万です。そんなことを言った人はきっと鼻でも詰まっていたのでしょう。実によい蕎麦の香り・味を楽しみつつ、カレー風味も同時に楽しめてこそカレー南蛮です。
出汁のおいしいお蕎麦屋さんでは、カレー南蛮を食べたあとでは黙っていても蕎麦湯をだして頂ける場合が多いです。この日はたまたま店員さんが新人だったみたいで、蕎麦湯をくださいと頼みました。
こんなに美味しいお出汁を蕎麦湯でも楽しまないなんて、ありえないですよね。
ああ、おいしかったぁ!
今日もよいスパイス記念日となりました。
めでたしめでたし
YouTube
より臨場感のあるその楽しみぶりは、ぜひ下記リンクのYouTubeの動画でご覧下さい。
おいしいっすよ!
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◆食べログもご参考に
神田まつや 本店
03-3251-1556
東京都千代田区神田須田町1-13